お昼のテレビ番組にて、和菓子に添えられている楊枝の職人さんが出演されていました。
口訣に「手数を減らせ」というのがありました。
つまりは一本の楊枝を削りだす手数を減らせということ。
一つの楊枝を削り出すのに、一度で削ることができるものを、二度、三度と削るのは、まず、心構えとしまして、優柔不断な仕事をするなということと、加えまして、一度で削るべきものを、二度、三度と削れば角度が甘くなります、それは作品の質の低下でもあるわけです。
それに職人であります以上、数をこなさなければなりません。

さて、自動車修理もそうですが、広義では職人でありますから、常に今の仕事の仕方について考え、もっとこうすれば手早くできるのではないかと考えることはとても大事なことですし、それを考え続けなければ、この仕事をするべきではありません。

ただ、作業によっては、手数を増やせ、手間をかけろと言うことがあります。それが保守作業です。
車検作業では、車をリフトにあげた後、タイヤハウス、車の裏面、たくさんのボルトやナットがありますが、その締め付け作業をしてまいります。
一つ一つボルトを締め付け直しては、黄色のペンキを印に塗っていきます。
滅多に弛むことはないのですが、全くないわけではありません。また、保守作業というのは、ひょっとしたらしなくてもいい無駄な作業かもしれないけれど、信頼性・安全性を考えたときには不可欠なものであります。

手間をかけずに締め付け作業をするならば、10個ほど、ボルトを連続して締め付け、とっとっとと、筆でまとめて黄色のペンキを塗っていけば、楽なのですが、私にはそれが絶対に許せないのです。
ですから、店の者にも一つを締めたらそれに黄色を塗り、また、一つ締め付けて黄色を塗るよう指導いたします。
メガネやスパナで締め付け、筆に持ち替えて塗り、また、スパナで締め付ける。
手間もかかりますし、邪魔臭がりますが、これによって、締め付け忘れをなくし、きっちりとした仕事を示すことが出来ると考えます、これこそが保守点検の骨子でもあると考えるのです。

『職人衆昔ばなし』 斎藤隆介全集 かなり良い本です。




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